徒然夜

孤独にあるのにまかせて、夜にPCと向かい合って、心に浮かんでは消える他愛のない事柄を、とりとめもなく書きつけてみる

CAN’T SLEEP FANTASY NIGHT

 あと2分、1分……0分‼……あれ?

公演開始時間の17:00を過ぎても、演奏が始まるどころか、客席の照明さえ、未だ落とされない。待ち遠しい気持ちが募り、時計を見る頻度が増える。今か、今かと焦らされる。

 その時だ。遂に辺りが暗くなったかと思うと、聞き覚えのあるギターの音で、前奏がスタートする。ステージのみに、薄明りが灯る。周りの歓声と共に、自分の中から興奮が込み上げてくる。ギターに続き、アップテンポのピアノの音が聞こえてきたかと思うと、続けて、耳に心地いい歌声が広い会場に響く。

「君に神はいない 所謂無神論者……」

すぐに曲名が脳裏を過る。一曲目は、“Death Disco”。

 CDや音楽プレイヤーで何度も聞いてきたその曲だが、伝わってき方が全く違う。音が耳に入ってくるのではなく、体全体に入ってくる。音というより、振動として。体が、心が揺さぶられる。体に走る振動が、私に、まるで自分自身が楽器になったかのような錯覚さえもたらす。

 すごい……‼

体全体で覚える、初めての臨場感。私の興奮は一気に頂点へと達する。それに伴って高鳴る鼓動は、全く苦ではなく、むしろ妙に心地いい。自然と、上げている右手の振りが大きくなる。

もっと感じたい……‼

私は目を輝かせて、少し前で演奏する彼らを、じっと見つめた。

 

 “Death Disco”から始まり、“スターライトパレード”で一旦終わる。そしてそこから、“スターライトパレード”のサビを観客全員で何度も口ずさみながら、アンコールを待つ。少ししてから、衣装を着替えたメンバーが、観客席の方までやってきて、再び曲が始まる。アンコールは、“Dragon Night”、“RPG” “すべてが壊れた夜に”という、通常よりも多い3曲で幕を閉じた。

 演奏された曲は全て知っていて、きちんとリズムに乗ったり、「歌える?」と振りをされたときは、きちんと歌ったりすることができた。

 すべての曲が終わると、意外なことに私の心は喪失感ではなく、満足感で溢れていた。そのことが、このライブを全力で楽しむことができたという、何よりの証拠なのだと思う。

 演奏された全20曲のうち、最も印象に残ったのは、3曲目に演奏された“眠り姫”。私がセカオワを好きになったきっかけは、中一のある日の美術の時間にかけられていた曲に陶酔し、授業後に先生にその曲について聞きに行くと、

SEKAI NO OWARIだよ」

と教えて貰ったことだった。自分で言うのには若干の抵抗があるが、私とセカオワの出会いは些か運命的だった。その時に聞いていた曲、つまり初めて出会ったセカオワの曲が、紛れもない“眠り姫”だったのだ。こんなに大好きなアーティストに出会えた幸せを改めて噛み締め、感極まった私の目からは、思わず涙が溢れた。ただただ、ありがとうと、何度も心の中で呟いた。

 

 学校に行きたくなかったときや、高専中退直後の苦しかったとき。気分がいいときや、楽しいことがあったとき。苦しいときは私を助け、楽しいときは私に寄り添ってくれた、SEKAI NO OWARI

 私にとってかけがえのない、大切な存在の彼らは、私にまた一つ、生きる希望をプレゼントしてくれた。上手くはいかない日々の中にも、楽しいこと、心躍ること、こんなにも心から笑えることがあるのだということを、私は彼らに教えてもらった。

 ライブが終わり、こんなにも好きでいられたことに幸せを感じられたのは、初めてだと思った。私にプレゼントをくれた彼らの為にも、私はこれからも頑張りたいと思う。苦しいときはまた、彼らの創る音楽に支えてもらいながら。

 最後に。ライブが行われた昨日、4月7日は、セカオワがファーストアルバムの“EARTH”を出してから、ちょうど9周年の日らしい。おめでとう、と心からお祝いしたい。彼らと同じ時代に生きられることを、私は心から誇りに思う。