徒然夜

孤独にあるのにまかせて、夜にPCと向かい合って、心に浮かんでは消える他愛のない事柄を、とりとめもなく書きつけてみる

さよなら

 自らお別れを切り出すなんて、寂しすぎる。だから私は、絶対に自分からその話を切り出したくなかった。

 無責任だ、自分勝手すぎる、そう思われて(悲しいけど)嫌われたってかまわない。どんなに悪く見られてもいい。そうしてでも、自分からその話を切り出したくはなかった。今までの事を思い返すと・・・・・・別れるには惜しすぎる時間と仲間、がそこには存在していたから。

 

 工嶺祭が終わるまで。そこまでは合唱を続けて、そのあとにやめよう。そう決めていた。自分で、勝手に。工嶺祭が終わるまでは学校に行こうと思っていたから。行ける気は全くしなかったけれど。

 しかし、自分からやめたいと切り出す前に親にそれを察されて、後期が始まるまでに手続きをすると言われた。それは予想していたよりあまりに突然すぎて、自分でも少し動揺していた。

 そして夏休み中も活動のある合唱に行くのは次で最後になる、と同好会長に言ったのは、そう、行くと決めた日の僅か5日前ほど。申し訳ないくらいに、それは突然すぎた。

 

 3日前。これで最後と決めていた部活の日。それを知っていたのは、私と会長だけ。明日から突然いなくなるつもりでいたかぁ、なるべく自然に、いつも通り何事も無いように過ごした。

 その日の活動が終わるとき、こっそりみんなの顔をちらっと見た。何だか涙が出そうになったのを私は堪えて、いつも通りさよなら。

 みんなと私のさよならの違いをみんなは明日以降知ることになるのだろう。一人で勝手に、そんなことを思っていた。

 

 家に帰り、母にどうだった?と聞かれた。母には今日が最後の部活だと伝えていた。

何も話してこなかったから、別に何ともと、素っ気なく答えた。

 すると母に、

「夜雨ちゃん、ちょっとそれ無責任だよ。いうのは寂しいかもしれないけれど、みんなには今までたくさんお世話になったでしょ?こないだだってそうだし。あなたは今日が最後って思っていたけれどみんなはそうじゃないでしょ」

と、静かに諭された。怒っているわけではなく、どちらかといと寂しそうな様子。

 私はそうね、と適当に返して足早に部屋に入った。

 

 中二で転校するとき、もといた中学のクラスメイトには、転校することを自分から切り出した。すると最後の登校日。みんなは私に内緒でこっそり準備を進めてくれていたみたいで、その日にお別れ会を開いてくれた。

 その後とか、最後に、何人かの特に仲が良かった友達が

「忘れないから。ずっと友達だから」

「手紙書くから」

と、口々に言ってくれた。勿論私は、素直に嬉しかった。

 しかしそれは、初めだけだった。初めの一回は本当にみんな手紙を書いて送ってくれたものの、そのあとやり取りしたのは結局一人。そしてその子からも、しだいに来なくなった。

 寂しかった。みんな平気で忘れているし、どこかで何かを期待していた私が馬鹿みたい、と思った。

 

 そんな経験があったから、私は自分から別れを切り出したくなかった。自分で言わないまま、勝手にすっと消えて、みんなの記憶から完全に消えてしまいたいくらいだった。

 

 しかし次の日。別の用事で学校に行った私は、電車で会長と会い、迷いながら結局、合唱の活動場所へと足を運んでいた。

 私は弱かったのか、強かったのか、間違っていたのか、それとも正しかったのか・・・・・・。色々なことが、分からなかった。少し日が過ぎた今でもそれはよく分からない。

 ただ、ごめんねと言いたかった。工嶺祭前の大事な時期に勝手にいなくなるわけだから。あと、もう一度会いたかった。なぜだか、そう思った。

 そうして結局、自分からその話を切り出し、これでさよなら。

 

 それから2日。直後は全くやめた実感が湧かなくてどんな感情も、何も湧かなかった。

 しかし、部活に足を運ばなくなって、そういう義務や権利さえ自分には存在しなくなって、グループLINEを退会して、練習していた曲をふと口ずさんで・・・・・・そういう瞬間に、ふと無意識に涙が頬を伝った。

 2度とは戻ってこない、楽しくて、大切だった時間と仲間。勝手に離れて、勝手に悲しむ。無責任な涙なのに、それは何故だか温かくて。

 

 今までありがとう。迷惑ばかりで何の役にも立てない自分だったけれど。

 

 最後に一つだけ、お願いを聞いてほしい。

 部活のメンバーに関しても、他の人に関しても。SNSでつながっている人が多いから難しいかもしれないけれど。

 どうか私の事をとっとと忘れてくれ。もし街で見かけても無視してくれ。会おうとか言うかもしれないよ、社交辞令で。でももう会わないから。

 自分はそういう無責任で自分勝手で、結構薄情な人間だから。

 

 色々あったけれど、これでさよなら。そういうことにしておかない?