徒然夜

孤独にあるのにまかせて、夜にPCと向かい合って、心に浮かんでは消える他愛のない事柄を、とりとめもなく書きつけてみる

前を向けないなら、上を向けばいい

 高専に入ったばかりの、毎日がわくわくや新たな発見の連続で、不安や心配の中にも、それよりも強い、確かな楽しさや好奇心を抱いていた一年生の四月。

 新入生歓迎会の後日。私は、知り合ったクラスの子三人とともにある部活の見学へと、足を運んだ。

 その部活には、別に興味があったわけでは無かった。むしろ、みんな真面目で怖そうだし、そういう系のオタクっぽくて怖いし、静かで雰囲気ヤバそうという勝手な偏見があり、入る気なんて無く、運動部の次に入らないだろう、という自分の中の候補にさえ上がっていた。

 しかし、入学してすぐ仲良くなった友達が好きだったので、遊び半分でとことこと見学について行ったのだった。

 その部活の活動場所に行くと、すでにもう何人かの先輩がいた。失礼ながら、黒縁眼鏡率が高すぎるというか、ほぼ全員黒縁眼鏡をしていて、真面目そうな怖そうな雰囲気を感じた。

 しかし口を開くと、みんなとてもフレンドリーで高専の事や勉強の事を、いっぱい話してくれて、なんだか想像とは全然違った、居心地の良さを感じた。

 その後、ぞくぞくと後から来た先輩たちが増えたが、ある一人の先輩が、入るのならLINE交換しない?みたいな雰囲気を出し始めた。そして、違う先輩が見学に来た他の友達と、1人ずつLINEを交換し始めた。

 え、私まだ入るとは言っていないんだけど・・・・・・。

 私は内心どうしよう?と、とてもあたふたしていたが、自分は人見知りで、急に知らない先輩にそういう事言えるタイプではないし、だからといって先輩達は誰も察してくれそうにないし・・・・・・。そして何より、LINE交換しない?みたいな雰囲気を出し始めた先輩が、見学に来てすぐ他の男子の友達に、

「おまえの性癖は?」

みたいなことをさらっと聞いていて、何か第一印象怖いなって思ったから、とてもじゃないけど言い出せなかった。

 そして、私の番が来て、流れに飲み込まれたまま先輩とのLINE交換が完了。

 その直後には、気が付いたらもう新入生歓迎会の話が始まっていた。

 信じられるだろうか?結構ひどい偏見があって入らないであろう候補にまで上がっていた部活に、私は”流れと雰囲気に飲まれて”という最も単純でしょうもない理由で入部することになったのだ。

 そして自分が一番驚いているのだが・・・・・・入部して二年半。私はその部活を、今でも続けているのだ。

 そう、これは某天文部に入部したときの小さなエピソードである。

 

 入部してからはまず新入生歓迎会があり、みんなでレクリエーションをしたり、お菓子を食べたりと楽しい時間を過ごした。そして観望会で、屋上に行って初めて(?)望遠鏡で月などを見た。それはすごくはっきり見えて、きれいで感動したのを覚えている。

 そして夏休みには、乗鞍高原に行って初めての合宿。夜に山の上でシートを広げ、寝袋にくるまって寝転び、星を見上げる。その年は結構晴れて、ペルセウス座流星群をいくつも見る事が出来た。寝転んで星を見た事、こんなにたくさんもの流星を近くで結構はっきり見た事、みんなでお菓子を食べた事(笑)・・・・・・全てが生まれて初めての経験で、それはとても楽しく、わくわくして、感動もした。そして生まれて初めて高山病にもなった笑

 工嶺祭では、プラネタリウムの上映をした。プラネタリウムはとてもきれいで、本当に感動した。そして、工嶺祭前に調べて作った、火星についてもポスターも掲示した。全然内容薄かったけれど、先生が女子には甘いから許してもらえてよかったな、何て思っていたら、隣に飾られた男子の作ったポスターが、私達女子が作ったポスターとは比べ物にならないくらい文字がぎっしりでびっくりした思い出がある笑

 

 二年生になって。同学年で三人はいた部活の女子が、みんな運動部と兼部していてそちらが忙しくなったため、ほぼ来られなくなった。一年生はすごくいっぱい入ってくれたが、みんな男子で、部活で女子が一人になった。初めは何だか、とても不安だった。

 しかしそれでもやめようとか、そういうのが頭に浮かびさえしなかったのは、本当に周りのおかげだと思う。

 もともと人見知りが激しくて一年生の頃はほぼ先輩と話せなかった私。しかし二年になって、少し慣れてきたらどんどん話せるようになって、普通に笑う事も出来るようになった。

 すると、今まで話さなかった先輩とも話せるようになり、色々な人が話してくれるようになり、前よりさらに居心地が良かった。

 今まで目さえ見られなくて失礼な態度ばかり取ってしまったのに、それでも話してくれ、優しくしてくれた友達や先輩には、本当に今でも言葉では言い表せないくらいの感謝の気持ちでいっぱいだ。

 そして、そういう事もあり、その年初めの行事である、新入生歓迎会を兼ねた菅平での合宿は、不安だった気持ちが全くと言っていい程に吹き飛び、むしろとても楽しい合宿となった。

 秋には、黒部の方に行ってプラネタリウムを見に、小さな旅行みたいなのに行った。間近で見た大きなプラネタリウムの装置や、映像がとても面白かったし、近くにあった海に行けたこともとても楽しかったのを覚えている。

 工嶺祭では、去年より更にグレードアップした、プラネタリウムがとてもきれいでハイテクで、とても興奮したし感動した。それを作った先輩の技術には、本当に感動したしとても尊敬した。

 

 三年になってからは、まだ半年。しかし、春合宿、先生の講演会、夏合宿など、すでに色々なことを経験した。どれも、本当に楽しくて素敵な思い出。

 これからまだ、色々なことを経験したい。

 本当に、天文についての知識は皆無、星の位置と名前も笑ってごまかしてしまうという程度の、知識の浅い自分がここまで部活動に楽しさを感じ、星について興味を持って活動できたことは、他ではできない、ここの部活だからこそ出来た事だと思う。いつも優しく、面白く、楽しくて居心地の良い大切仲間がいたからこその事。そう、強く信じている。

 これから、私は忙しくなって時間の余裕が無くなったり、または大きくなって都会に行って夜でも人工灯の主張が激しい環境に行くかもしれない。

 しかし、どんな時でも、忘れたくない。もし忘れてしまっても、思い出したい。自分が生きる地球の空がこんなにもきれいで、星を見る事が、こんなにも素敵で楽しいということを。

 ”長野県は宇宙県”

先生は確か、こういうことをよく言っていた。本当に、長野から見える星空は素敵だ。しかし一人で見たのなら、つまらない。何だか寂しい。大人になってもいつかまた、あの日一緒に星を見た仲間とともに、時間も忘れて、のんびりと星を見たい。

 そしてもし今後何かにつまずいたりつらいことがって前を向けなくなっても、忘れたくない。

 それでも、空を見上げるということを。

 そんなことを、夜空を見てなぜかふと思った。